循環器画像診断グループ
近年の急速な技術進歩による診断精度の向上や被ばく低減により、患者さんへの身体的負担の少ない非侵襲的検査の需要が増加しています。当院の画像診断グループでは、核医学検査(心筋シンチ)、心臓CT、心臓MRIなど、多様な非侵襲的検査を施行し、多面的な画像診断を行っています。あらゆる心臓疾患の診断・評価を通じて、心疾患の早期発見や的確な治療に貢献することを目指しています。
① 心臓核医学検査
心筋シンチグラフィーの利点は、心臓カテーテル検査と比較して身体への負担が少なく、安全に実施できる点です。また、造影剤を使用しないため、カテーテルや冠動脈CTと比較してアレルギーや腎障害のリスクがある患者さんにも安心して実施できます。一方で、撮影が2回必要なため、CT検査と比較すると検査時間がやや長くなります。
当院では、胸痛を主訴に受診された患者さんのスクリーニングや、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患に対する診断に心筋シンチグラフィーを活用しています。これにより、虚血部位、範囲、程度を明らかにし、心臓カテーテルの必要性や冠動脈バイパス術の適応など治療方針の決定をサポートします。また、治療効果の判定や心筋viabilityの評価にも広く活用しています。
2023年に当院で施行された心筋シンチグラフィーは、全体で417件(運動負荷68件、薬剤負荷247件、安静 102件)でした。2025年に最新式の撮影機器「NMCT860」(GE)を導入しました。これにより、従来機器に比べて画質の向上が期待でき、より質の高い医療の提供を実現していきます。また、テクネシウム製剤を用いた一日法(安静先行/負荷法)や、腹臥位での追加撮影により、明瞭でアーチファクトの少ない画像を取得し、診断精度の向上を図っています。
その他、心筋脂肪酸代謝のイメージング製剤であるBMIPPシンチグラフィーや、交感神経異常の精査を目的としたMIBGシンチグラフィーによるイメージングも行っています。また、心アミロイドーシスの診断には99mTc-PYP(ピロリン酸)シンチグラフィーが有用であり、特にATTRアミロイドーシスの診断に役立ちます。18F-FDG-PETにより、心筋糖代謝や炎症の評価が可能であり、主に心臓サルコイドーシスなど心臓の炎症評価目的で撮像を行っています。
心筋SPECT
左冠動脈前下行枝に高度狭窄を呈した一例



② 心臓MRI
心臓MRIは、放射線被ばくを伴うことなく、心機能や形態、心筋性状、虚血、血流などを評価できる非常に有用な検査です。心筋の浮腫や炎症の評価、シネMRIによる心機能評価に加え、ガドリニウム造影剤を使用することで局所の心筋障害や線維化も可視化することが可能です。2023年に当院で施行された心臓MRIは246件でした。
当院では、心臓MRIを用いて心アミロイドーシス、心サルコイドーシス病変の検出や、冠動脈病変を伴わない心機能低下例に対する原因推定などを行っています。また、虚血性心疾患に限らず、心不全、心筋症、弁膜症といった幅広い症例にアプローチし、より深い病態の解明と治療方針の検討を行っています。また、T1マッピングを用いて、心筋全体の異常を検出し、心臓をより包括的に評価する取り組みを進めています。
また、画像診断グループでは、月一回の心臓MRIカンファレンスを開催し、循環器内科医師、放射線科医師、放射線技師などが症例検討を行うことで、質の高い画像診断と評価の実現に努めています。
心臓MRI
心アミロイドーシスの一例




PET
心臓サルコイドーシスの一例


③ 心臓CT
心臓CTは、主に非侵襲的に冠動脈を評価するために用いられています。 当院では、低線量、高速撮像を利点とする2組のX線管球と128スライス検出器を搭載した2管球CT(SOMATOM Drive Dual Source CT、シーメンス)を用いた診断、評価を行っています。薬物で脈拍を減らす必要がなく数ミリの冠動脈病変を評価することができます。全ての心臓冠動脈CT検査は放射線被曝と造影剤使用の問題がありますが、外来で30分程度で終了する画期的な検査方法です。
2023年に当院で施行された心臓CTは1152件でした。主に、胸痛があり冠動脈狭窄が疑われる症例、PCI後の冠動脈評価、冠動脈バイパス術後のバイパス血管評価、先天性心疾患の解剖学的評価などに対して検査を行っています。また、冠動脈撮影以外にも、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)や不整脈に対するカテーテルアブレーション治療の際にも用いています。心臓の形態や解剖学的評価、心房細動などの不整脈を有する症例に対しても、積極的に検査を行い、診断や治療に役立てています。
今後、ますます低被爆での検査を提供できるように、診断と治療に役立つ検査として放射線部と共同で循環器内科は検討を開始しております。また、さらなるデータの蓄積・画像解析を行い、より適切な症例に対して検査が可能となるよう、データを示していきたいと考えています。
心臓CT
正常冠動脈


