循環器疾患検査治療

心臓カテーテル検査・治療

心臓病は悪性新生物(癌)に次いで日本人の死亡数の第2位にあたります。特に近年、食生活の欧米化など生活様式の大きな変貌により狭心症、心筋梗塞など動脈硬化が原因とされる心疾患は増加の傾向にあります。そのような心臓病が疑われた場合に、精密検査としてカテーテルという細い管を使って心臓を体の中から調べる心臓カテーテル検査があります。

心臓カテーテル検査とは、冠状動脈という心臓を栄養する血管に造影剤を注入して血管の内腔を描出し動脈硬化による狭窄を評価したり、心臓の動きや内部の圧 力を測定することで、心臓の機能や弁膜症の状態などを評価します。さらに、従来から日本人などのアジア人に多いと言われている、冠状動脈のけいれんに由来する冠攣縮性狭心症の診断のための薬物負荷による誘発試験や、心筋症の診断のために心筋組織を採取する心筋生検などがあります。またカテーテルによる治療法 として、冠状動脈の狭窄を拡張する経皮的冠動脈インターベンション治療(PCI)などがあります。

心臓カテーテル検査・治療

冠動脈インターベンション(PCI)治療について

冠動脈狭窄に対するカテーテル治療の黎明期である1980年代はバルーンによる病変拡張(POBA)が主な手段であり、急性冠閉塞(治療後まもなくの血管閉塞)のリスクが高く、“再狭窄”(拡張した部位が数ヵ月後に再び狭くなること)も高率であったことから、その適応も決して広くはありませんでした。
1990年代前半には、これらの問題点を克服すべく新しい治療器具が登場(ステント・DCA・ロータブレーター)、特に冠動脈ステント(BMS: Bare Metal Stent)は初期成功率を向上させるとともに再狭窄率を低減しました。また、手技の簡便さもあり、ステント留置後の血栓症発症予防のための2剤抗血小板療法(DAPT)の確立とともに、冠動脈治療の中心となりました。この頃より、経皮的冠血管形成術(PTCA)から冠動脈インターベンション(PCI)とその名称も変更されました。しかし、再治療率は依然として20%程度の症例で認められ、特に新生内膜の過剰増殖によるステント内再狭窄(ステント内に新たな狭窄が生じること)は新たな問題となりました。

薬剤溶出性ステントの登場

そこで2000年前半、新たに登場したのが、細胞増殖を抑制するための免疫抑制剤をポリマーから溶出する薬剤溶出性ステント(DES: Drug Eluting Stent)であります。DESによる劇的な再治療率の軽減効果はPCIの大きな欠点であった“再狭窄”にある一定の解決をもたらし、複雑病変をはじめとした難治症例を含むさらなる適応拡大につながりました。現在では第2世代のDESが臨床のほとんどで使用されており、第1世代DESで指摘された長期的な有効性・安全性についても検証が進み、良好な成績が報告されています。そして、昨年末からは、薬剤を溶出するポリマーも完全に吸収され消失するbioresobable polymer DESが第3世代のDESとして、すでに今日の臨床の場での使用が開始されています。2016年中には、いよいよ生体内で分解され消失する生体吸収性ステントが使用可能となる見込みであり、冠動脈に異物を残さないという課題にもようやく着手するものと思われ、まだまだ解決すべき問題は残すものの、次世代を担うデバイスとして大いに期待されます。

東京慈恵会医科大学循環器内科での取り組み

現在、当科ではPCI治療の約90%の症例で薬剤溶出性ステント留置による治療が選択されており、再治療の頻度は約7%弱となっております。また、2011年から2015年の5年間で、PCI治療を1212件施行しましたがPCIの合併症(緊急症例などは除く)での死亡は0件、緊急手術0件、経皮的心肺補助装置(PCPS)挿入1件、大動脈内バルーンパンピング(IABP)挿入は4件となっております。
当院では多種多様な治療デバイスが使用可能でありますので、冠動脈造影検査のみでなく、血管内圧測定(FFR)・血管内超音波(IVUS)・光干渉断層法(OCI)などの生理的機能検査・画像検査を併用して病変の評価を行い、より適切な治療選択、より安全な正確な治療を心がけております。

心臓カテーテル検査・治療
※2016年4月現在
心臓カテーテル検査・治療
※2016年4月現在

心臓カテーテル検査・治療