循環器疾患検査治療

経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)について

急速に進む高齢化社会を向かえ、さらに進化を続けていく循環器分野のカテーテル治療は狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患に対するPCI治療だけではなく、弁膜症などのstructural heart diseaseにも施行されています。その筆頭にあがるのが経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)であり、当院においても2015年8月から、このTAVI治療を開始しております。

大動脈弁狭窄症は高齢化社会に伴い増加の一途を辿っていると考えられ、潜在的な患者数は80万人にも上るとの報告もあります。この病気の難しい点は重症の大動脈弁狭窄症であっても、全く症状のない症例が少なくないため、その発見が遅れることです。しかし、ひとたび狭心症・失神・心不全などの症状が発現しますと、その後の経過が極めて不良となります。原則的な治療としては外科的な大動脈弁置換手術となります。しかし、その必要ありと判断された時点で、高齢であることや基礎疾患等の理由により手術治療の適応にならない症例が約4割近くにあるとの報告もあります。このような外科的手術適応の難しい症例がTAVIの良い適応となります。

経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)

TAVIの適応について

具体的には高齢者(80歳以上)、frailty(日常生活の活動度)、開心術の既往歴、軽度の認知症、慢性閉塞性肺疾患の合併など、基礎疾患を抱え手術が困難な症例がTAVIの適応となります。海外の大規模臨床試験においては(PARTNER試験)、TAVIによる1年生存率は外科手術とほぼ同等の成績が示され、非手術適応症例においては従来の保存的加療に比しTAVIの良好な成績が示されております。

日本での状況について

本邦では2013年よりTAVI治療が開始され、施設基準を満たした認定施設(2016年4月現在、全国で約97施設)において、すでに約3000例に施行され、1年生存率は88%と良好な数字が報告されております。重篤な合併症として弁輪破裂、冠動脈閉塞、心室損傷などがありますが、現状では極めて低い頻度となっております。

東京慈恵会医科大学附属病院での取り組み

当院においても2013年12月から慈恵医大ハートチームを結成、厳しい施設認定をクリアーし2015年8月からTAVI治療を開始しております。症例の選定や治療戦略に際しては、循環器内科医はもちろん心臓外科、血管外科、放射線科、麻酔科、リハビリ科、臨床工学士、看護師等などの多くの分野にわたるスタッフを交えてディスカッションを行い、患者様・疾患の現状評価、治療適応の決定を経て、安全かつ正確な治療に心がけております。現在までに当院で施行した症例数は7例でありますが、手技成功率は100%です。

今後、新たに使用可能となる生体弁もいくつかあり、より安全により多くの適応症例への治療が期待されます。当科としましても、常により低侵襲で高度な医療を提供できるよう日々努力していく所存であります。

経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)
経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)

経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)
経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)

経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)
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経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)
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